Kindleの「ポピュラーハイライト」で疑心暗鬼になる
Kindleの「ポピュラーハイライト」機能について、最近思っていることを書く。困った機能である。
Kindleには本の中の文章にハイライトをつける(紙の本でいうと「線を引く」)機能があって、ポピュラーハイライトは「多くのKindleユーザーがこの文章にハイライトをつけています」と教えてくれる機能だ。
こんな感じでハイライトした人数も一緒に表示される。本の要点をまとめた文章や、いいこと言ってる文章がよくポピュラーハイライトになる。数十人でポピュラーハイライトになるらしい。
ポピュラーハイライトの文章は、多くの人が何かしら「感じるもの」を覚えた文章なので、当然おれも何かしらの感動(「なるほど」とか「いい言葉だ!」とか)を覚えることが多い。
そのとき、たまに思う。おれはこの文章に感動しているのか、それとも「感動させられている」のか? ポピュラーハイライトになっていなくても、「いい言葉だ!」とか思っただろうか?
おれが覚えた感動は、実は「みんながハイライトしている」という情報に釣られているだけなんじゃないか、と思うことがあるのだ。
だから、本を読んでいても「あれ、本当におれはこの文章に『感じて』いるのか……?」みたいになって、わからなくなる。
こうなると疑心暗鬼である。ポピュラーハイライトには「バンドワゴン効果」が働きやすいんじゃないか、100人のハイライトのうち半分ぐらいは「釣られハイライト」(「釣られ感動」)なんじゃないか、実はそんなに大したこと言ってない文章なんじゃないか。そんな人間の習性を利用して、数十人で結託して普通の文章にハイライトをつけて他人を釣る遊びをしている集団がいるに違いない……(いない)。
たかだかハイライトの話なんだけど、こんなふうに、ポピュラーハイライトには他者を意識させるところがある。
おれは一人で本を読んでいるつもりが、実は他者に踊らされて(というか勝手に踊って)いるのだ。ポピュラーハイライトは読書を孤独な営みでなくした。
とはいえ、これがなかったら気づかなかったかもしれない「いい文章」に気づかせてくれる機能でもある。
また、「ここはハイライトするよねー」みたいな楽しさもあるし、いいと思った文章がポピュラーハイライトになっていなければ「おや、皆さん、ここ……お見逃しで?」などと妙な優越感を得て楽しんでもいるのである。実はけっこう好きな機能なのである。