きがるに書くログ

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そんなに凄いヤツだったんか…… 『トラクターの世界史 人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち』

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歴史にもトラクターにも詳しくないんだけど、中公新書ツイッターで見かけたかなんかして、面白そうだと思って読んだ本。

面白かった。トラクターが世界各地に普及した経緯や、それがもたらした影響を論じる本で、タイトル通り「歴史を変えた」と言っていいほど重要な役割を果たしていることが分かる。

農業だけではなく政治をも大きく変えていて、さらには戦争との関わりも深い。第一次世界対戦で使用された戦車はトラクターから着想を得たものらしい。

ラクターには素朴な農業のイメージしかなかったが「お前、そんなに凄いヤツだったんか……」みたいな、物事の意外な一面を見せられたときの驚きがある。

 

当時の資料からはトラクターに対する農民の反応は賛否両論だったことがよくわかる。多くの人がトラクターに「恋」をした一方、トラクターの歴史はその違和感との戦いでもあった。

実際、トラクターがもたらしたものにはいい面ばかりでなく悪い面もあり、個人的にはプラスの面よりもマイナスの面の方が興味深い。

さきに触れた戦車への転用もそうだし、事故や購入資金のための多額の借金、牛や馬と違って排泄物を出さないことから大量の肥料を使う必要が生じ、そのために土地が痩せるなど、トラクターは人間に「災い」も多くもたらしている。

 

あと、エルヴィス・プレスリーがトラクターのファンだったとか、トラクターのメーカーだったランボルギーニが高級車メーカーになったのは、トラクターで富を築いて高級車のコレクターになったから、という話は雑学として面白い。

 

まったく知らない分野の本なので、どの話も新鮮だった。自分と関係のない(少なくとも「実家が農家だ」みたいな近さにはない)世界の本を読むのも良いものである。

本書を読み終えたらkindleアプリのおすすめに『ジャガイモの世界史』やら『チョコレートの世界史』やら、同じ中公新書の『〇〇の世界史』シリーズがわんさと出てきて、どれにもそそられる。こうして読みたい本は無限に増えていく。