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永田町の「修行僧」とはどんな人か 『本当に君は総理大臣になれないのか』(小川淳也・中原一歩)

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政治家がこんなことを言っているのを目にしたら、どう思うだろう。

「本物の仕事をするためには、自己規律が基本だと思っています。僕は目立つことも得意ではないし、地面の上を実直に這うことくらいしか取り柄はありませんから」

大半の人は「口では何とでも言えるよ」と冷めた目で見るだろう。なにかウラがあるに決まってる。

しかし、どうもこの人は、ホントのホントにそう思ってこう言っているようなのだ。30歳くらいの初々しい新人議員ではない。5回の当選を経験している50歳の議員だ。

 

本書は2019年「不正統計問題」をめぐる予算委員会での活躍や、ドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』で話題になった衆議院議員小川淳也氏の本。

構成は、講談社現代新書編集部による小川議員への「ガチンコ」インタビュー(講談社「現代ビジネス」でも読める)と、ノンフィクションライター中原一歩氏による評伝の二本立て。

gendai.ismedia.jp

この小川議員という人が、なんというか、本当に生真面目というか青臭いと言うか・・・という感じの人なのだ。その生真面目さから永田町でついたあだ名は「修行僧」。

冒頭にひいた言葉を大真面目に言い、党内の出世には興味がない(それが「数が物言う」政治の世界ではネックになっているようだけれど)。

読めば読むほど、この人はストイックすぎて政治家に向いてないんじゃないか、という気がしてくる。

チャーチルは「選挙に出る人間なんて金儲けしたいとか、目立ちたいとか、そういう人間ばかりだ」という旨のことを言ったそうだけど、それが政治家というものだとすると、あきらかにこの人は政治家に向いてない。

その一方で、多くの人が政治に辟易しているであろう中では、こういう「向いてない」人こそが求められてもいるのだろうな、と思う。

 

僕は政治に詳しくないので小川議員が掲げる政策についての評価は避けるけれど、本書や本書出版記念オンラインイベントをみるに「社会を変えるには政治が変わるだけでなく、国民の積極的な政治への参加も必要」と考えているところには賛成する。

選挙というのは有権者が「この政治家はよくないな」と思ったときに「交換」できる仕組みなのだけど、有権者の政治に対する関心が低いとそれが機能しない。

有権者が政治を見ていないと政治家が仕事をしないのは当然で、有権者が政治をチェックしていれば、政治家もそれに応えざるを得なくなる(はずだ)。

有権者に「こんな政治家もいるんだ」と思わせるような政治家が出てくるのも大事だけど、真っ当な人が勝てるような土壌を有権者が作ることも必要だ。

 

こういう青臭いまでに理想家タイプの人が総理大臣になるべきかは、何とも言えない。しかし、政治家に対する国民のイメージを変えるきっかけとして得がたい人に思える。

この人はもちろんとして、この人以外にも「政治家っぽくない」政治家がもっと注目を浴びるようになればいい。

(そのためには僕自身もうちょっと政治に関心を持つべきで、偉そうなことは言えないのだけれど……)

↓本書出版記念イベントのアーカイブ

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