きがるに書くログ

「マカロニグラタン」と同じアクセントです

「とらや」のようかんはいいぞ

知らなかったことを知るのが楽しいのは、「世界が広がる」感じがするからだと思う。

世界が広がることには、新しい散歩コースを開拓するような、あるいはゲームでロックされていた領域がアンロックされるような、そういう快感がある。

先日、知ってるようで知らなかった領域を開拓して、ちょっとだけ世界が広がる経験をした。291円で。

 

スーパーで買ったようかんを食べていて、思った。安いようかんと高いようかんって、なんか違うのか?

漠然と、ようかんなんて「どれも同じ」だと思っていた。今までようかんを食べて「これはうまい!」と思ったことなどない。だいたいどれも同じ味という印象である。

しかし、大抵のものには、お手頃なものと高級なものとがあり、ようかんも例外ではないようだ。両者はなにか違うのか?

その謎を解明すべく、我々は和菓子の老舗「とらや」へ向かった。

 

そういうわけで、近所のスーパーで買った某メーカーの小倉ようかん(73円)と、ようかんの最高峰「とらや」の小倉ようかん(291円)を食べ比べたのだけど、これが予想以上に違って驚いた。

もはや、おれにとってようかんは「どれも同じ」ではない。ようかんの世界には奥行きがあり、その奥には「いつもの」ようかんとは違う、高級なようかんがある。

 

歯を入れた段階で「あっ、違うぞこれは」と思った。まさか舌に乗る前から違いが分かるとは……。

食感が違う。寒天っぽさが少なく、なめらかで、小豆がぎゅっと詰まっている感じがするのだ。今までようかんを食べて「寒天」を意識したことなんかなかったが、知ってしまった。ようかんには寒天っぽいものと、寒天っぽくないものとがある。

味も違う。「とらや」のようかんに比べると、お手頃なほうは(それでも十分おいしいことはお断りしておくけど)甘みに「しつこさ」がある。「甘い」を通り越して「甘ったるい」感じだ。ようかんってこういうものだと思っていた。

一方とらやは、ようかんだから当然しっかり甘いのだけど、甘さが舌にまとわりつく感じがない。加えて、甘さの合間に小豆の味も感じられる。

「上品な甘さ」という言い回し、知ってはいたけど、どんな甘さのことか、よくわかっていなかった。しかし今ならわかる気がする。たぶんこういう甘さのことだ。

 

全然「どれも同じ」じゃなかった。こんなに違いがあるとは知らなかった。

もちろん、高いようかんの味など知らなくても別に困らないし、むしろ贅沢の味を知りすぎるのは困りものである。73円のようかんだって十分おいしい。

しかし、そこをあえて奮発して、ふだん縁のない「いいもの」の世界をのぞき見る経験には、おいしいお菓子を食べる快感以上のなにかがある。

以来、スーパーやコンビニや百貨店でようかんを買っては食べ比べている。こういう、「あえて」の遊びに、人生の豊かさがある。たぶん。

www.toraya-group.co.jp

 

P.S. とらやのようかんは原材料がシンプルでカッコいい。比較対象のお手頃なほうのようかん(写真撮り忘れた)には水飴とか人工甘味料とかが入っていた。