きがるに書くログ

「マカロニグラタン」と同じアクセントです

ダメなものはダメ『人間にとって善とは何か: 徳倫理学入門』


最近読んだ本に「徳」という概念の話が出てきたのを読んで以来、「徳」のことがなんとなく気になっていたので読んだ。「徳倫理学」とは、「行為のあり方」ではなく「人のあり方」を問題にする倫理学らしい。

読んだには読んだが、こんな入門があるかよというくらい難しく、半分も理解できていない。しかし「道徳的な悪は人間にとっての欠陥である」という旨の主張が印象的だった。

 

いわく、たとえばシカにおいては(捕食者から逃れて生き延びるために)足が速いことは「善」である。反対に、足が遅いことはシカにとって「欠陥」である。これと同じように、道徳的な悪は、人間にとって不可欠なものを欠いた状態、つまり「欠陥」なのである(たぶんそういうことを言ってるんだと思う)。

こういう「悪いもの」を「悪い」と言い切る主張が、「人それぞれ」とか「正義の反対はもう一つの正義」とかよく言われる時代にあっては新鮮に思えた。

あと、徳倫理の特徴として「その中身を『規則』や『ルール』『原則』としては書けない、あるいは書かない」というのがあるらしい。

最近おれは「世の中、理屈で説明しきれないものってあるよな」と漠然と思い始めているので、この点でもなんか惹かれるものがある。

 

ともあれ、分不相応に難しい本に手を出してしまった。でもたまにはこういう「挑むような」読書もいいよね(さいごまで読めてえらい!)。

なお、買ってから知ったのだけど本書の原題は"Natural Goodness"で入門の「にゅ」の字もなく、なんだよ~という感じである。